歯周病(歯周炎・歯肉炎)
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歯周病(歯周炎・歯肉炎)

歯周病は、歯を支えている歯周組織に起こる疾患の総称で以前は歯槽膿漏(しそうのうろう)とも呼ばれていました。歯肉炎は、歯の表面に付着した歯垢(しこう)の中の細菌が原因となって、歯ぐき(歯肉)に炎症を起こしている状態です。歯周炎は歯肉炎がさらに進行して、歯垢が石灰化した歯石が歯と歯ぐきの間の境目に侵入し、間に歯周ポケットという隙間ができて、歯周組織を破壊している状態です。

井上修二 先生

監修

井上修二 先生 (いのうえしゅうじ) (共立女子大学名誉教授、医学博士)

日常生活から考えられる原因

不十分な歯磨き

歯磨きやうがいが不十分だったり、間違った方法で歯磨きをしていると、口の中に糖質や食べかすが残ります。すると歯垢(しこう)がつくられ、それが溜まって歯石になります。これらが歯周病の引き金になって、悪化を起こす原因となります。永久歯が生え、大人と同じような物を食べるようになる6〜7歳頃から歯垢がつきやすくなり、歯肉炎を発症するようになりますので、この頃から正しい歯磨きの習慣が必要になります。

歯並びや噛み合わせが悪い

歯並びが悪いと、ていねいに歯磨きをしても歯垢が取り除きにくいために、歯垢が残って歯肉炎を起こしやすくなります。その上、歯石ができて歯周炎にも進行しやすくなります。また、噛み合わせが悪いと寝ている間に歯ぎしりをしやすくなります。歯ぎしりは歯や歯ぐきに大きな負担をかけ歯周病を悪化させる原因になります。

口の中の乾燥

口呼吸をしている人ほど歯周病が多いといわれています。それは歯垢を洗い流したり、殺菌作用のある唾液が減少するためです。毎食後にしっかりと歯磨きしているのに歯ぐきが腫れるというようなときは、口の中の乾燥が原因になっているかもしれません。

喫煙

タバコを吸う人は吸わない人に比べて歯周病になりやすいといわれています。これは、タバコに含まれるニコチンによる血流の悪化によって、歯ぐきの抵抗力が落ちることや、唾液の分泌が減少し、歯垢が歯につきやすくなることが原因になると考えられています。

ビタミンCの不足

ビタミンCが不足すると、細胞同士をつなぐ働きをするコラーゲンが十分に生成されなくなります。そのため血管がもろくなり、少しの刺激でも歯ぐきの毛細血管が傷ついて出血します。

歯周病(歯周炎・歯肉炎)の症状

歯ぐきから出血しやすくなる歯肉炎

歯ぐきの先端が丸みを帯びて膨らんでいたり、全体的に赤く腫れていたり、さらに軽く歯を磨いただけで歯ぐきから血が出るようなときは歯肉炎が考えられます。この段階でしっかりと歯磨きによって歯垢を取り除けば症状を改善することが可能です。

歯ぐきが赤紫色になる歯周炎

歯肉炎が進行するとともに、歯と歯ぐきの間に歯石が付着し、歯周組織が破壊されるようになると、歯ぐきは赤紫色に変色し柔らかい感触に変化していきます。さらに口臭が発生したり、歯ぐきから膿が出ることもあります。そのまま放置しておくと、歯を支えている歯槽骨(しそうこつ)という骨の破壊も進み、最終的には歯が抜け落ちることになります。

予防法

ていねいに歯磨きをする

1日3回、食後できれば3分以内に3分間歯磨きをすることで、歯周病の最大原因である歯垢を除去することができます。奥の歯から2本ずつを目安に全部の歯をていねいにブラッシングしましょう。歯垢が取れにくい歯と歯ぐきの間は、歯ブラシを少し斜めにして小刻みに動かすと歯垢が取り除けます。加えて1日の最後にデンタルフロスで歯と歯の間を掃除すると、より一層歯周病を遠ざけることができます。

良く噛んで、唾液の分泌を多くする

唾液は、食べ物のかすを洗浄したり、口の中の細菌を浄化するなど重要な働きをしています。唾液の分泌が多い子どもが歯周病になりにくいといわれているのも、この働きによるものです。唾液の分泌を増やすには、日頃から良く噛んで食べる習慣が大切です。また、噛み応えがあり自然と唾液の量が増える玄米や豚もも肉、牛もも肉、小魚や生野菜などの食品を意識してとることをおすすめします。

甘い物を食べた後は、すぐにケアをする

糖類を多く含む甘い物を食べることで、歯垢の付き方が何倍にもなるという報告があります。しかし、食べた直後に水やお茶を飲んで食べカスを胃に送り、なるべく早い時間に歯磨きをすることで歯垢を防ぐことができます。好きなものを我慢してストレスを溜めてしまうよりは、食べてケアをすることを心がけるといいでしょう。

禁煙をする

タバコを吸う人は歯周病にかかりやすいだけではなく、歯周病の進行速度も速くなり、その上治療をしても治りにくいこともわかっています。自分の歯で一生食事をするためにも、禁煙にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

ビタミンCを積極的にとる

ビタミンCを積極的にとることで、歯ぐきを丈夫にすることができます。ビタミンCはレモン、グレープフルーツ、じゃがいも、チンゲン菜などに多く含まれています。ビタミンCを食品だけでとるのはなかなか難しいので、ビタミンCが含まれているサプリメントなどで補給することもおすすめです。

歯科医で定期的に歯垢を取る

歯垢がきちんととれているか、毎年定期的な歯の検診をすることが大切です。歯垢が固まると歯石になり、歯磨きでは除去できなくなります。とくに歯並びや噛み合わせが悪く、なかなか歯垢が取れない場所があるようなときは、歯科医で定期的なメンテナンスを受け、歯垢や歯石を取り除きましょう。最近では痛くない歯石除去の方法もありますので、歯科医に相談してみましょう。

対処法

歯周病に効果的な歯ぐきマッサージを行う

歯ブラシの横腹で歯ぐきを圧迫しつつ、歯ブラシの毛先が歯の表面をこするように回転させて歯ぐきのマッサージをしましょう。このマッサージを1日1回、歯の1本1本に行うことで、歯ぐきがギュッと引き締まります。

市販の薬を使う

歯ぐきが赤く腫れて出血するようなときは、歯ぐきの炎症を抑える効果のある軟膏を塗ることで症状が緩和されます。しかし、根本の原因である歯垢を取り除かなければ症状は悪化する一方です。歯垢が気になったり、出血が続くようなことがあれば、必ず歯科医を受診しましょう。

病院で診察を受ける

固い物を食べたり、歯を磨いたりすると歯ぐきから出血するときや、歯ぐきが赤や赤紫色に変色しているときは歯周病が疑われます。歯周病は初期であれば簡単な治療と自宅でのケアで改善できますので、早めに歯科医を受診しましょう。

プチメモ歯石って何?石灰化って何?

歯石って何?石灰化って何?

「歯石」「石灰化」という言葉をコマーシャルなどで耳にしたことはありませんか?歯石とは、取りきれなかった歯垢が固まって石のように固くなったもので、この過程を石灰化といいます。歯垢は2日から2週間で段々と固くなっていき、ひとたび石灰化すると歯磨きでは除去できなくなります。さらにその周りに新たな歯垢がつきやすくなるために、歯石が雪だるま式に増えて歯周病を引き起こします。歯垢のときにていねいな歯磨きを行うことが歯石の、そして歯周病の何よりの予防です。