尿のにごり
  • 泌尿器・肛門 泌尿器・肛門

尿のにごり

健康な人の尿は透明の淡黄色ですが、普段より尿が白っぽくにごっていることがあります。このにごりの原因は主に、尿に含まれる塩類が結晶化しているか、尿路が細菌などに感染しているか、血尿がある場合かに分けられます。また、女性の場合おりものが尿に混じることで、尿の色自体は透明であるにも関わらず、浮遊物が混じることでにごって見えることがあります。

井上修二 先生

監修

井上修二 先生 (いのうえしゅうじ) (共立女子大学名誉教授、医学博士)

尿がにごる症状をともなう疾患

腎臓、尿管や尿道など尿の通り道や膀胱に結石があると、血液が混じった白くにごった尿が排出されます。腎盂腎炎(じんうじんえん)、膀胱炎、尿道炎などのように、尿路に感染があると尿はにごります。さらに感染が悪化して化膿すると膿が混ざり、尿のにごりが強くなります。その他、性感染症や腎結核も、細菌の感染により尿がにごります。また、前立腺がん、腎臓がん、膀胱がんが進行すると血液が混ざり、尿がにごることがあります。

腎結核

結核菌に感染して起こる代表的な疾患は肺結核ですが、結核菌が血液の流れに乗って腎臓に到達すると腎結核を引き起こします。初期症状として唯一あらわれるのが尿の白いにごりです。進行すると腎臓に膿が溜まり、尿に大量の膿が混じり、40℃以上の高熱や下腹部の強い痛みが生じます。

腎臓結石・尿管結石

シュウ酸や尿酸などの塩類が結石状に固まって腎臓や尿管に留まる疾患です。塩類結石が尿の中に混ざり、尿がにごる、血尿になる他、排尿に時間がかかるとともに残尿感があり、トイレに行く回数も増えます。腎臓結石が尿管に落ちるときや結石が尿管を移動するときには、それが刺激となって腰痛や下腹部の激しい痛みが発作的に起こり、冷や汗をかくほどの激痛に襲われることもあります。

腎盂腎炎(じんうじんえん)

腎盂や腎そのものが細菌に感染して起こります。発熱とともに、尿の濁りや血尿がみられるほか、背中から腰にかけての痛みや吐き気、嘔吐、発熱などが現われることもあります。排尿時の痛みや尿の回数が増えることもあります。下半身の冷えが主な原因になるため、下半身の冷えに悩む女性に多くみられる疾患です。

急性膀胱炎

膀胱内に細菌が侵入して炎症を起こすのが膀胱炎です。膀胱炎になるとトイレが近くなり、排尿時の痛み、尿のにごりや血尿などの症状があらわれます。圧倒的に女性に多く、再発しやすく慢性化すると尿が溜まるだけで痛みが生じます。性行為による感染が原因になることもあります。

性器クラミジア感染症

クラミジアという細菌による性感染症で、女性の性感染症では最も多い疾患ですが、おりものが多少増える程度の軽い症状のため、感染に気が付かない場合も多くあります。進行すると不妊の原因となったり、妊婦の場合は胎児が産道の通過で感染し、重篤な肺炎や結膜炎を起こすこともあるので、注意が必要です。男性が感染すると尿の出始めの軽い痛みやしみる感じとともに、淡黄色や白色の膿が少量混ざり、尿がにごります。

淋菌感染症

淋菌という細菌による性感染症です。女性は顕著な症状があらわれることが少なく、感染から数日後に外陰部のかゆみやおりものの増加が起こる程度なので、感染に気付かず慢性化することがあります。また、妊婦が感染すると、新生児の結膜炎を招き、最悪は失明の危険もあります。見過ごすと炎症が尿道や膀胱に広がり、排尿時に痛みを感じるようになります。男性の場合、尿道が感染することで尿の出始めに焼け付くような強い痛みとともに黄色い膿が尿に混じります。

尿道炎

尿道炎は男性に多くみられる疾患です。原因のほとんどは、性行為による淋菌やクラミジア菌などの感染で尿道に炎症を起こします。淋菌の感染は尿に大量の黄色い膿が混ざってにごり、排尿時に強い痛みをともないます。クラミジア菌の感染は排尿時の軽い痛みとともに、淡黄色や白色の膿が少量排泄され尿がにごります。尿道炎は放置しておくとまったく排尿できなくなる尿道狭窄(きょうさく)の原因にもなります。

前立腺炎

尿道から侵入した大腸菌やブドウ球菌に前立腺が感染して、炎症を起こします。初期には頻尿や残尿感、排尿時の軽い痛みが生じます。進行して炎症が強くなると排尿時の痛みが増し、さらに膿が混じった尿が出るようになり、下腹部痛や倦怠感、悪寒、高熱などがあらわれます。

前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん

いずれのがんも初期には自覚症状があまりありませんが、血尿により尿のにごりが生じることがあります。しかし、初期の場合、肉眼で確認できる血尿はごくまれなので、検査して血尿が認められることで、異常が見つかることが多いのです。進行して腫瘍が大きくなると排尿困難や残尿感などがあらわれ始めます。やがて肉眼でもわかる血尿で尿がにごり、尿が全く出なくなる尿閉や勃起不全などが生じます。いずれのがんも一刻も早い泌尿科の受診と治療の開始が必要です。

※上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

シュウ酸の摂りすぎや、性感染症などが尿のにごりの原因

動物性食品とシュウ酸を多く含む食品の摂りすぎ

ほうれん草、ココアやバナナなどに含まれるシュウ酸や脂肪を多く含む肉類などの動物性たんぱく質を摂りすぎると、尿中にシュウ酸カルシウムの結晶ができやすくなり、尿がにごることがあります。このにごりは、基本的には心配いりません。しかし、シュウ酸を多く含む食品や動物性たんぱく質の摂りすぎ、あるいはカルシウム不足が習慣的に続く食生活は、尿中のシュウ酸カルシウム結石を招く恐れがあります。

性行為などの感染による尿のにごり

最近、性交渉の低年齢化が問題になっています。これに比例するように10代の若年層の間で淋菌、クラミジアなどの性感染症(STD)の増加が報告されています。性感染症は性行為を通じて感染し、性器や尿の通り道に炎症を起こし、男性では淋菌やクラミジアによる急性尿道炎を起こすと膿が尿に混ざります。女性はおりものが多少増え、それが尿に混ざりにごってみえます。

女性特有の尿のにごり

女性の場合、おりものが尿に混じって尿がにごることがあります。性器にかゆみや痛みがなく、生理期間以外で透明な尿に粘り気のある浮遊物が混ざっているようなときは、おりものと考えて間違いないでしょう。また、生理期間は尿に血液が混じることもあるので、にごってみえます。

血尿による尿のにごり

過労によって体の抵抗力が低下すると、膀胱が細菌に感染しやすくなり、炎症を起こして血尿になることがあります。また、プリン体を多く含む肉類やビール酵母などの摂りすぎによって、肝臓でプリン体が代謝された尿酸が結晶化し、結石になることがあります。結石が尿路を傷つけると、血液が混ざった尿が排出されます。血尿には、肉眼で分かる赤い血尿と、見た目には色の変化はありませんが顕微鏡で検査して確認できる二通りがあります。

長期間尿のにごりが続いたり、にごりが強い場合は泌尿器科へ

尿のにごりが強いときや長期間続くときには泌尿器科で診察を受けましょう。排尿時の痛みが強いときや長期間続くときには泌尿器科で診察を受けましょう。性感染症の疑いがあるときは泌尿器科か婦人科を受診しましょう。万が一パートナーが感染していたときは、自覚症状がなくても感染している可能性がありますので、必ず自分も診察を受けましょう。

尿のにごりを防ぐには食生活や性感染症に気を付ける

動物性たんぱく質とシュウ酸を多く含む食品に注意をする

シュウ酸カルシウムの結石による尿のにごりの大きな原因となる動物性たんぱく質とシュウ酸を摂りすぎないように心がけましょう。動物性たんぱく質は肉類、卵、乳製品に多く含まれ、シュウ酸はほうれん草やココア、バナナに多く含まれています。

柑橘類と緑黄色野菜を積極的に摂る

クエン酸やマグネシウムを多く摂ると、尿に含まれるシュウ酸とカルシウムの濃度を低下させ日常的な尿のにごりや、結石の発生を防ぐことができます。クエン酸は柑橘類に、マグネシウムは緑黄色野菜や玄米、大豆、大豆製品に豊富に含まれています。これらの食品を毎日摂るように心がけましょう。

プリン体を多く含む食品を控える

尿酸カルシウムの結石による尿のにごりの大きな原因は、プリン体を多く含む食品の摂りすぎです。プリン体はビール酵母、レバー、牛肉、あん肝、イクラなどに多く含まれています。とくにビールは尿酸の排出を低下させますので、焼肉とビールの組み合わせが連日続くような食生活では、尿がにごるばかりではなく、痛風の原因にもなりますので、日頃から摂りすぎないように心がけましょう。

性感染症はコンドームの使用で予防する

性感染症は、正しい知識を持ってパートナーとともに予防していくことが大切です。性感染症を防ぐためには、コンドームの使用が一番現実的で確実ですが、行為によっては防げない性感染症もあります。くれぐれも注意しましょう。

プチメモいま、急増中の前立腺がんを防ぐには

いま、急増中の前立腺がんを防ぐには

前立腺がんだけではなく、全てのがんに共通する予防法はバランスのとれた食事です。とくにさんまなど青背の魚に含まれる不飽和脂肪酸、緑黄色野菜に含まれるビタミンCや葉酸、大豆に含まれるビタミンEやイソフラボンを積極的に摂るようにしましょう。また、前立腺がんは初期には自覚症状がなく、気づいたときには進行している可能性が高い疾患です。50歳をすぎたら1年に1回は前立腺の検査を行うことをおすすめします。